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浜松校ブログ

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お便り

2026/10/17

子どもの「自分で考える力」はどう育つ?|AI研究から考える「探索」と「学習」

「教えればできるのに、自分からはなかなか勉強しない」

「塾や学校では問題が解けるのに、家では何を勉強すればよいのか分からない」

お子さまの学習について、そんな悩みを感じたことはないでしょうか。

教室で子どもたちを見ていても、授業の待ち時間や空き時間に、自分からテキストを開いて学習を始める生徒がいる一方で、次に何をするのか先生からの指示を待っている生徒もいます。

もちろん、そのときの疲れ具合や性格、置かれている状況も違いますから、一つの行動だけで学習意欲や能力を判断することはできません。

けれども、こうした日常の姿を見ながら、私はよく考えます。

「自分で考え、自分で学ぶ力」は、どのようにして育っていくのだろうか。

今回は、AI(人工知能)の研究にまつわる興味深い話を交えながら、子どもたちの「探索」と「学習」について考えてみたいと思います。

1. 成績の良い子の「何」を真似る?

私たちは何かを学ぼうとするとき、つい「すでに成功している人」に目を向けます。

成績の良い人、難関大学に合格した人、大きな仕事を成し遂げた人、経済的に成功している人。

そして、その人たちが使っているものや行動を真似することで、自分も同じような結果を得られるのではないかと考えます。

もちろん、成功している人の方法を真似ること自体は、決して悪いことではありません。

しかし、外側から見えていることだけを真似しても、同じ結果が得られるとは限りません。

例えば、成績の良い生徒が毎日3時間勉強しているからといって、同じように3時間机に向かえば、同じ成績が取れるわけではありません。

その生徒がもともと持っていた知識や理解度、学習環境、自分の弱点を把握する力、学習を継続するための工夫など、目には見えないさまざまな要因が、その結果を支えているからです。

本当に目を向けるべきなのは、その人が「何をしているか」だけではなく、「なぜそれをするようになったのか」「どのような過程を経て、そこにたどり着いたのか」ということです。

そして、こうした本質は、ただ外側から眺めているだけでは、なかなか見えてこないものです。

自分自身が勉強方法を工夫し、うまくいかない経験をし、どうすれば改善できるかを考えたことがあるからこそ、他人の学習方法の中にある意味に気づけることもあります。

自分で探索した経験があるからこそ、他人の成功の裏側にある本質が見えてくる。

そして、その気づきを自分自身の行動に生かしていくことが、次の学びにつながるのだと思います。

2. 完成した飛行機を見ても、「空を飛ぶ原理」は分からない

このことを考えるうえで、とても興味深い話があります。

今、目覚ましい進化を続けているAIの研究にまつわる話です。

AIの研究が本格的に始まったのは1950年代ですが、その発展は決して順調なものではありませんでした。

初期のAI研究では、人間の知識や論理、判断の仕組みを記号やルールで表現し、コンピューターに処理させる方法が重視されていました。

そんな中、1980年代に異なるアプローチを提唱したのが、ロボット研究者のロドニー・ブルックスです。

彼は、人間の高度な知能を最初から再現しようとするのではなく、もっと基本的な「環境を感知し、行動する」という働きに注目しました。

そして、1991年に発表した論文の中で、とても面白い例え話を紹介しています。

もし、まだ飛行機が存在しなかった1890年代の研究者たちが、タイムマシンに乗って1980年代へ行き、完成された大型旅客機に乗ることができたら、どうなるだろうか。

研究者たちは未来の飛行機を目にして、自分たちも同じものを作ろうとするでしょう。

しかし、そこで彼らが熱心に研究するのは、座席の形や二重になった窓、当時は見慣れないプラスチックのような素材かもしれません。

完成された飛行機を見たことで、かえって目に見える部分の再現にとらわれてしまうのです。

けれども、飛行機を飛ばすために本当に必要なのは、座席でも窓でもありません。

空を飛ぶための原理を理解し、その原理に基づいて試行錯誤を重ねることです。

例えば、紙飛行機をどうすれば遠くまで飛ばせるのか。羽の形を変えたらどうなるのか。重さや空気の流れは、飛び方にどのような影響を与えるのか。

そうした問いを立て、試し、飛行の仕組みを理解していくことが重要です。

完成形を知ることと、それが成立する仕組みを理解することは、まったく違う。

ブルックスは、この例えを通じて、高度な知能の完成形をそのまま再現しようとするAI研究の難しさを指摘しました。

これは、最初にお話しした「成績の良い人の表面的な行動だけを真似ても、同じ結果にはならない」という話にも通じるものがあると思います。

3. 最初から、すべてを知っている必要はない

ブルックスが重視したのは、あらかじめ周囲の世界の情報をすべて与えるのではなく、ロボット自身が実際の環境を感知し、その状況に応じて行動できる仕組みを作ることでした。

例えば、障害物を感知したら避ける。壁があれば方向を変える。周囲の状況に応じて行動を切り替える。

こうした比較的単純な働きを組み合わせることで、複雑な環境でも目的を達成できるようにするのです。

そして、ブルックスが共同創業したiRobot社は、2002年にロボット掃除機「ルンバ」を発売しました。

初期のルンバは、現在の一部の機種のように部屋の地図を作成し、自分の位置を把握しながら掃除していたわけではありません。

センサーで周囲を感知し、障害物や壁などの状況に応じて動きを変えながら掃除を進めていました。

もちろん、これはルンバが人間のように自分の経験を振り返り、学習していたという意味ではありません。

ここで興味深いのは、複雑な行動を実現するために、必ずしも最初から世界のすべてを理解している必要はない、ということです。

外の世界を感知し、実際に行動し、状況に応じて次の行動を変える。

ブルックスの研究は、知能を考えるうえで、こうした現実の環境との相互作用が重要であることを示しました。

私は、この考え方には、子どもたちの学びにも通じるものがあると感じています。

4. 「教えてもらえばできる」と「自分で考えられる」は違う

私たちは、子どもたちに何かを教えるとき、つい先回りをして、必要な情報や正解、手順をすべて与えようとしてしまいます。

何を勉強するか、どの問題を解くか、どのように解くか、間違えたらどう直すか。

大人が細かく指示を出せば、子どもは迷わずに取り組めますし、その場では効率よく学習が進むかもしれません。

しかし、それだけで学びが完結してしまったら、どうでしょうか。

与えられた問題を解くことはできても、自分で課題を見つけることができない。

教えられた方法を再現することはできても、うまくいかなくなったとき、次にどうすればよいのかを考えられない。

そんな状態になってしまう可能性があります。

もちろん、知識を教えることや、正しい方法を伝えることは大切です。

知識がなければ、考えることも、問題を解決することも難しくなります。

しかし、知識を与えられることと、その知識を使って自分で考えられるようになることは、同じではありません。

例えば、テストで間違えた問題があったとします。

先生から正しい解き方を教わり、その通りに解き直すことも、一つの学習です。

しかし、そこでさらに、

「自分はなぜ間違えたのだろう」

「どこで考え方が違っていたのだろう」

「次に同じような問題が出たら、どうすれば解けるだろう」

と、自分で問いを立て、原因を探し、別の問題で確かめてみる。

もしまた間違えたら、もう一度考え、方法を変えて試してみる。

この過程では、単に解き方を覚えているだけではありません。

自分の理解度を把握する力、問題の原因を考える力、解決方法を選ぶ力、自分の行動を修正する力も使っています。

教育心理学では、自分の理解や学習の進め方を把握する「メタ認知」や、計画・実行・振り返りを通して自分の学習を調整する「自己調整学習」が重要視されています。

こうした力は、最初から子どもにすべて任せれば自然に身につくというものではありません。

必要な方法を教え、一緒に考え、少しずつ自分でできるように支援していくことが大切です。

5. 「壁にぶつかる経験」が、学びに変わるとき

ここで大切になるのが、「探索」と「学習」です。

探索とは、自分で問いを持ち、情報を探したり、実際に試したりしながら、まだ分からないことを明らかにしていくこと。

学習とは、その経験から何かを理解し、次の判断や行動に生かせるようになること。

ただ動き回ればよいわけでも、ただ失敗を繰り返せばよいわけでもありません。

壁にぶつかったとき、そこで何が起きたのかを考える。

うまくいかなかった理由を探し、次はどうすればよいのかを考える。

そして、もう一度試してみる。

この繰り返しによって、単なる経験が「次に生かせる学び」へと変わっていきます。

例えば、勉強時間を増やしても成績が伸びなかった生徒がいるとします。

そこで、「もっと勉強しなさい」と言われるだけではなく、自分で勉強の仕方を振り返ってみる。

すると、問題集はたくさん解いていたけれど、間違えた問題を十分に復習していなかったことに気づくかもしれません。

そこで、解き直しの方法を変えてみる。数日後にもう一度、何も見ずに解けるかを確かめてみる。

そうした経験を重ねたあとで、成績の良い生徒が同じ問題集を何度も解いている姿を見たとき、以前とは違った気づきが生まれるかもしれません。

「あの子は、ただ問題をたくさん解いているのではなく、できなかったことをできるようにしているんだ」と。

成功している生徒の行動が変わったのではありません。

自分自身が探索し、経験から学んだことで、そこから読み取れるものが変わったのです。

以前はただ「すごい」と思っていたことの中に、なぜその人が成功したのかという理由が見えてくる。

そして、その気づきが、また自分自身の新しい探索につながっていく。

知ること、試すこと、気づくこと、学ぶこと。

これらは一方通行ではなく、互いに影響し合いながら、理解を深めていくのだと思います。

ご家庭でも大切にしたい「問いかけ」

こうした力を育てるために、ご家庭でもできることがあります。

例えば、勉強を始める前に「今日は何からやる?」と聞いてみる。

勉強が終わったら「今日は何が分かるようになった?」と聞いてみる。

うまくいかなかったときには「次はどんな方法を試してみようか?」と、一緒に考えてみる。

大人がすべて決めるのではなく、子ども自身が少しでも選び、考え、振り返る機会をつくることです。

もちろん、何をしたらよいのか分からない子には、最初から一人で考えさせるのではなく、いくつかの選択肢を示したり、一緒に計画を立てたりする支援が必要です。

大切なのは、できることが増えるにつれて、少しずつ子ども自身に判断を任せていくこと。

正解を教えるだけでなく、正解にたどり着くための考え方も育てていきたいと思います。

6. AIが答えを教えてくれる時代に、子どもたちに育てたい力

今は、インターネットやAIを使えば、膨大な情報を瞬時に手に入れられる時代です。

知りたいことを調べれば答えが見つかり、分からない問題もAIに聞けば、丁寧に解説してくれます。

それは、とても便利で素晴らしいことです。

けれども、情報を簡単に手に入れられるようになったからこそ、私たちは「知っていること」と「理解していること」、そして「自分で考えられること」の違いを、より意識する必要があるのかもしれません。

どれほど多くの情報を与えられても、それを受け取るだけで終わってしまえば、自ら問題を見つけ、解決していく力を十分に育てることは難しいでしょう。

知識を得ることは、学習の大切な出発点です。

しかし、そこから自分で問いを生み出し、得た知識を使って考え、実際に試してみること。

そして、うまくいかなかったときに、その原因を探し、学び、もう一度挑戦すること。

その機会を、子どもたちから奪わないようにしたいと思います。

教育に必要なのは、正解を教えないことでも、子どもを一人で放っておくことでもありません。

必要な知識や方法はきちんと教えながら、子ども自身が探索し、試行錯誤し、そこから学べる機会をつくること。

そして、少しずつ自分の力で判断し、行動できるように支えていくことです。

知識を与えることはできても、自ら考え、学ぶ力まで、そのまま与えることはできません。

完成形を真似るだけでは見えてこなかったものが、自分で探索することによって、少しずつ見えてくる。

そして、そこで得た気づきが次の探索を生み、また新しい学びにつながっていく。

私は、その繰り返しの中にこそ、子どもたちの知能や思考力が豊かに発達していく、大切な過程があるのだと思います。


個別指導WAM浜松校が大切にしていること

個別指導WAM浜松校では、小学生・中学生・高校生を対象に、一人ひとりの理解度や学習状況に合わせた個別指導を行っています。

私たちが大切にしているのは、目の前の問題を解けるようにすることだけではありません。

「なぜ間違えたのか」「次はどうすればよいのか」を自分で考え、学んだことを次に生かせるようになること。

そして、少しずつ自分で学習を進められるようになることです。

定期テストの点数や志望校合格という目標を大切にしながら、その先にもつながる「自分で学ぶ力」を育てていきたいと考えています。

「勉強の仕方が分からない」「言われないと勉強を始められない」「本人に合った学習方法を考えたい」

そんなお悩みがありましたら、学習状況や普段のご様子をお聞かせください。

お子さまにとって、今どのような支援が必要なのかを、一緒に考えていきたいと思います。

個別指導WAM浜松校|学習相談・お問い合わせ

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〒430-0944
静岡県浜松市中央区田町226-6 丸八平野ビル2階東

対象:小学生・中学生・高校生

参考資料

  • Rodney A. Brooks (1991), Intelligence without representation, Artificial Intelligence, 47, 139–159. MIT公開論文(PDF)
  • iRobot, iRobot Introduces Roomba Intelligent FloorVac (2002). 公式発表
  • iRobot, iRobot Enters the Smart Home with Roomba 980 (2015). 公式発表
  • Education Endowment Foundation (2025), Metacognition and Self-Regulated Learning. 指導ガイド

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